「会社を辞めたい。でも上司に言い出せない」
「退職を伝えたら引き止められそう」
「もう会社の人と直接話をするのがつらい」
そんなときに目にすることが増えたのが「退職代行」だ。
名前は聞いたことがあっても、
「退職代行って何をしてくれるの?」
「本当に本人の代わりに会社へ連絡してくれる?」
「会社との交渉も全部やってくれる?」
「弁護士とは何が違う?」
と疑問に思う人も多いだろう。
この記事では、初めて退職代行を知った人に向けて、
仕組み・運営主体・利用の流れ・料金・できることとできないことを
順番に説明する。
そもそも退職代行とは?
退職代行を非常に簡単に表すと、
「本人に代わって、勤務先へ退職の意思を伝えるサービス」
だ。
東京弁護士会も、一般的な退職代行サービスについて、
料金を支払うことで事業者が本人に代わって退職の意思を
会社へ伝えるサービスと説明している。
基本的な関係を図にすると、
👤あなた
↓ 相談・依頼
退職代行
↓ 退職意思を連絡
勤務先
という形になる。
つまり、退職代行を利用する大きな目的は、
「会社を辞めるという意思を、
自分で直接伝えることが難しい場合に、
その連絡を第三者に依頼する」
ことにある。
退職代行を使うと「退職させてもらえる」の?
ここは最初に理解しておきたい。
退職代行会社が特別な権限によって、
「この人を退職させなさい」
と会社に命令するサービスではない。
そもそも、無期労働契約の場合、
厚生労働省の労働契約ポータルでは、
労働者はいつでも退職を申し出ることができ、
法律上は申出から14日を経過したときに退職となると説明している。
会社が「退職を認めない」と言えば絶対に辞められない、という仕組みではない。
ただし、有期労働契約ではルールが異なる。
契約期間中は原則として途中退職できないものの、
「やむを得ない事由」がある場合には
途中で退職できるという別のルールがある。
そのため、
「退職代行を使えば、どんな雇用契約でも必ず今日付けで退職できる」
という理解は正確ではない。
【図解】退職代行の仕組み
初めての人は、次のように考えると分かりやすい。
①あなた
「退職したい」
↓
②退職代行へ相談
現在の状況・雇用契約・希望退職日などを伝える
↓
③正式に依頼
料金・サービス内容を確認して申し込む
↓
④退職代行から勤務先へ連絡
本人の退職意思などを伝える
↓
⑤会社と必要な手続きを進める
退職届・貸与品・必要書類など
↓
⑥退職
サービスによって細かい流れは異なるが、基本構造はこのようなものだ。
重要なのは、
「本人の退職意思そのものを退職代行会社が決める」のではない
という点だ。
退職を決めるのは本人。
退職代行は、その意思を会社へ伝える役割を担う。
退職代行には3種類ある
ここが退職代行を理解するうえで最も重要なポイントの一つだ。
「退職代行」という同じ名前で呼ばれていても、
誰が運営しているかによって対応範囲が違う。
大きく分けると、
| 運営主体 | 主な役割・特徴 |
|---|---|
| 民間事業者 | 退職意思の伝達などが中心 |
| 労働組合 | 労働組合法上の団体交渉を行える場合がある |
| 弁護士・弁護士法人 | 法律事務・交渉や法的トラブルへの対応が可能 |
順番に見ていこう。
①民間事業者が運営する退職代行
一般企業などが運営するタイプだ。
基本となるのは、
「本人が退職する意思を会社へ伝える」
という役割。
例えば、
「○○さんから退職の意思を預かっています」
「今後の連絡について本人の希望をお伝えします」
といった連絡だ。
ただし注意したいのが、法律上の交渉である。
弁護士法72条との関係から、
弁護士等ではない民間事業者が、
報酬を得て法律事件について
代理・和解などの法律事務を扱うことには制限がある。
東京弁護士会も、退職代行サービスについて、未払い残業代の請求などを例に非弁行為となる場合があると注意喚起している。
そのため、
「会社への連絡」と「会社との法律上の交渉」は別
と覚えておくと分かりやすい。
②労働組合が関係する退職代行
もう一つが、労働組合による退職代行だ。
労働組合は、
労働者が労働条件の維持・改善などを目的として組織する団体で、
憲法28条では団結権・団体交渉権・団体行動権が保障されている。
そのため、適法な労働組合が組合員のために
会社と団体交渉を行うことがある。
例えば、
有給休暇
退職日
未払い賃金
などについて、労働条件に関する団体交渉の対象になる場合がある。
ただし、
「労働組合なら弁護士とまったく同じことができる」
という意味ではない。
組合としての適法性や加入関係、
依頼内容などによって対応範囲が問題になることもあるため、
具体的に何をしてくれるのかを契約前に確認することが重要だ。
厚生労働省の中央労働委員会資料でも、
労働組合による活動と弁護士法72条との関係について
裁判例を含めた議論が示されている。
③弁護士・弁護士法人による退職代行
弁護士が依頼を受けて退職に関する対応を行うタイプだ。
特に、
■未払い残業代を請求したい
■会社から損害賠償を請求されている
■退職をめぐって会社と争いになっている
など、法律上の交渉や紛争への対応が必要なケースでは、
弁護士へ相談する意味が大きくなる。
「会社へ辞めると伝えてほしいだけ」なのか、
それとも、
「会社と法律上の問題について交渉してほしい」
のか。
ここを整理すると、どのタイプを選ぶべきか分かりやすくなる。
【図解】3種類の違いを簡単に理解しよう
初心者なら、まず次のイメージで覚えておこう。
民間事業者
→ 「退職したい」という意思を伝えてもらう
労働組合
→ 退職意思の伝達+労働組合法上の団体交渉を行える場合がある
弁護士
→ 退職意思の伝達+法律上の交渉・請求・紛争対応
ただし、実際のサービス内容は各事業者・組合・法律事務所によって異なる。
名前ではなく「誰が運営していて、
どこまで対応する契約なのか」を確認することが重要だ。
退職代行を使ったら会社へ行かなくていい?
「退職代行を使ったら、申し込んだ翌日から絶対に会社へ行かなくていいの?」
これも一律には言えない。
無期契約の場合でも、法律上は原則として退職の申出から14日経過で退職となる。
その期間について、
□有給休暇を利用するのか
□会社が欠勤を認めるのか
□会社と合意して退職日を決めるのか
などによって状況が変わる。
したがって、
「退職代行=必ず即日退職」
とは考えないほうがよい。
「今日から出社しないこと」
と
「今日付けで雇用契約が終了すること」
は別の話だからだ。
退職代行では何をしてもらえる?
サービスによって異なるが、一般的には、
□退職意思の伝達
□希望退職日の伝達
□会社との連絡窓口
□退職届などの案内
□貸与品返却についての連絡
□離職票など退職後の書類についての連絡
といった対応が考えられる。
ただし、
「伝えてもらえること」
と
会社と交渉してもらえること」
を混同しないようにしたい。
特に、
・未払い残業代
・損害賠償
・慰謝料
・会社との法的紛争
などがある場合は、
一般的な民間事業者だけで対応できるとは限らない。
【図解】利用から退職までの基本的な流れ
STEP1 退職代行へ相談
Web、電話、LINEなど、サービスが用意している方法で相談する。
ここでは、
※雇用形態
※勤続期間
※希望退職日
※有給休暇
※会社から借りている物
※会社に置いている私物
※未払い賃金などのトラブル
を整理しておくとよい。
STEP2 サービス内容・料金を確認
ここで必ず、
★誰が運営しているのか
★何をしてもらえるのか
★追加料金はあるのか
★返金条件はあるのか
★会社とトラブルになった場合はどうなるのか
を確認する。
STEP3 正式に申し込む
内容に納得したら契約・支払いを行う。
利用規約も確認しておこう。
STEP4 退職代行から会社へ連絡
指定した日時などに退職代行側から勤務先へ連絡し、
本人の退職意思などを伝える。
STEP5 退職手続きを進める
必要に応じて、
退職届の郵送
社員証
制服
健康保険証等の返却が必要な場合の対応
パソコン
会社の鍵
など、会社から借りている物を返却する。
会社から受け取る必要がある書類についても確認しておこう。
STEP6 退職
必要な手続きを終え、雇用契約が終了する。
その後、転職先が決まっていなければ、
雇用保険や健康保険、年金などの手続きが必要になる場合がある。
退職代行の料金はいくら?
料金は運営主体・サービス内容・雇用形態・追加対応などによって違う。
そのため、「退職代行の相場は必ず○万円」と覚えるより、
基本料金に何が含まれているのか
を見ることが重要だ。
例えば、
□相談料
□退職連絡
□追加連絡
□労働組合への加入費
□弁護士費用
□残業代などを請求する場合の費用
□追加対応費
などが別になっていないか確認しよう。
「基本料金が安い」だけで決めるのではなく、
最終的にいくら支払う可能性があるかを見るのがポイントだ。
こんな場合は退職代行以外の相談先も考えよう
退職代行は、仕事を辞めたい人の選択肢の一つだ。
しかし、すべての労働問題を解決するサービスではない。
例えば、
■パワハラを相談したい
■未払い賃金について相談したい
■会社と労働条件でもめている
■損害賠償を請求された
などの場合は、
労働局などの公的な相談窓口や
弁護士への相談が適していることもある。
厚生労働省の総合労働相談コーナーでは、解雇、雇止め、配置転換、賃下げ、いじめ・嫌がらせなど幅広い労働問題を対象に相談を受け付けている。
初めて退職代行を選ぶときのチェックポイント
最低限、
「運営主体」
「対応範囲」
「料金総額」
「追加料金」
「トラブル時の対応」
を確認しよう。
特にホームページに、
「何でも交渉できます」
「必ず即日退職できます」
などと書かれていたとしても、その言葉だけで判断せず、
誰がどの法的根拠で対応するのかを見ることが大切だ。
退職代行サービスの広告より先に、
運営者を見る。
これを覚えておくと選びやすくなる。
まとめ|退職代行は「会社を辞める意思を伝えてもらう」ことから始まる
退職代行を初めて知った人は、難しく考えなくてもいい。
基本的な仕組みは、
本人
↓
退職代行へ依頼
↓
退職代行が勤務先へ退職意思を伝える
↓
必要な退職手続きを行う
↓
退職
というものだ。
ただし重要なのは、
すべての退職代行が同じではないということ。
民間事業者、労働組合、弁護士では、対応できる範囲が異なる。
単に「上司へ退職を言い出せない」というケースと、
「未払い残業代も請求したい」
「会社から損害賠償を求められている」
というケースでは、必要な専門性も違う。
まず、
自分は何を代わりにしてもらいたいのか?
を整理する。
そのうえで、
運営主体と対応範囲を確認してサービスを選ぶことが、
退職代行を理解する最初の一歩だ。


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