病気で働けない、治療中で再就職できない、失業保険がもらえない。
そんな退職後の不安を抱える人へ、傷病手当金、失業保険の受給期間延長、
障害年金、生活保護、高額療養費制度、求職者支援制度など
9つの公的支援を解説。相談先や申請時の注意点も紹介します。
「病気で会社を辞めたけれど、すぐには働けない」
「治療費がかかるのに、毎月の給料がなくなってしまった」
「失業保険を申請しようとしたら、今は働けないので受けられないと言われた」
病気やけがによって退職を考えるとき、
心配なのは身体のことだけではありません。
家賃、住宅ローン、食費、健康保険料、年金、そして治療費。
仕事を辞めても、生活費の支払いは続きます。
しかし、日本には病気で働けなくなった人や、
失業保険を受けられない人の生活を支える制度があります。
大切なのは、自分がどの制度の対象になるかを知り、
必要な手続きを確認することです。
この記事では、
退職後の生活を守るために知っておきたい9つの公的支援制度を紹介します。
- 病気で働けない人は失業保険をもらえないの?
- 救済制度① 傷病手当金|病気で働けない間の生活費を支える
- 救済制度② 失業保険の受給期間延長|回復後に備える
- 救済制度③ 雇用保険の傷病手当|失業保険の手続き後に病気になった場合
- 救済制度④ 障害年金|長期療養が必要な人の生活を支える
- 救済制度⑤ 高額療養費制度|治療費の負担を抑える
- 救済制度⑥ 生活困窮者自立支援制度|家賃や生活の相談ができる
- 救済制度⑦ 生活保護|生活を維持できないときの最後の安全網
- 救済制度⑧ 求職者支援制度|失業保険を受けられない人の再就職を支援
- 救済制度⑨ 国民年金保険料の免除・猶予|退職後の固定費を減らす
- 状況別|どの制度を確認すればよい?
- 退職前に確認しておきたい7つのこと
- よくある質問
- まとめ|病気で働けないときは、生活を守る制度を先に確認しよう
病気で働けない人は失業保険をもらえないの?
まず、失業保険(雇用保険の基本手当)について理解しておきましょう。
基本手当は、会社を退職した人すべてに支給されるわけではありません。
原則として、次の状態にあることが必要です。
- 働く意思がある
- 就職できる健康状態や環境にある
- 積極的に求職活動をしている
- 仕事が見つかっていない
- 雇用保険の加入期間などの要件を満たしている
つまり、病気の治療などで今すぐ働けない場合、原則として基本手当を受け取れません。
ただし、ここで知っておきたいことがあります。
今は失業保険を受けられなくても、
将来の受給に備える手続きや、別の生活保障制度があるのです。
救済制度① 傷病手当金|病気で働けない間の生活費を支える
傷病手当金は、会社員などが加入する健康保険の制度です。
業務外の病気やけがで働けず、
給与が十分に支払われない場合に、
一定の条件を満たすと支給されます。
主な支給条件
- 業務外の病気やけがで療養している
- 仕事に就くことができない
- 連続する3日間の待期期間を満たし、4日目以降も休んでいる
- 休業中の給与が支払われていない、または傷病手当金より少ない
いくらもらえる?
支給額は、原則として次の計算方法で求められます。
1日当たりの支給額
=支給開始日前の継続した12か月間の標準報酬月額の平均額÷30×3分の2
例えば、標準報酬月額の平均が30万円の場合、
概算では1日約6,667円です。
30日分なら約20万円が目安となります。
実際の金額は加入期間や報酬、
給与の支払い状況などによって変わります。
いつまでもらえる?
支給期間は、原則として支給開始日から通算1年6か月です。
退職後も受け取れる?
一定の条件を満たせば、退職後も継続して受け取れます。
主な条件は、
退職日までに継続して1年以上の健康保険の被保険者期間があり、
退職日時点で傷病手当金を受けているか、受けられる状態にあることです。
特に注意したいのが退職日の出勤です。
退職日に出勤すると、
退職後の継続給付の条件を満たさなくなる場合があります。
治療中に退職を考えている人は、
退職日を決める前に加入先の健康保険へ確認しましょう。
なお、国民健康保険には原則として
会社員向けのような傷病手当金制度はありません。
加入している保険によって取り扱いが異なります。
救済制度② 失業保険の受給期間延長|回復後に備える
「今は働けないけれど、治療が終わったら再就職したい」
そんな人が確認したいのが、雇用保険の受給期間延長制度です。
失業保険の受給期間は、原則として離職日の翌日から1年間です。
しかし、病気やけがなどによって30日以上続けて働けない場合、
受給期間を延長できることがあります。
延長できる期間
原則として、働けない期間を受給期間に加算でき、
延長できる期間は最長3年間です。
つまり、通常の受給期間と合わせて最長4年間となる場合があります。
注意したいこと
受給期間を延長している間に、失業保険が支給されるわけではありません。
これは、病気が回復して働けるようになったときに、
受給する機会を確保するための制度です。
また、離職時の年齢などによって取り扱いが異なります。
特に65歳以上で離職した人は、
一般的な基本手当とは制度が異なるため確認が必要です。
申請は、働けない状態が30日続いた後、
できるだけ早めに住所地を管轄するハローワークへ相談しましょう。
救済制度③ 雇用保険の傷病手当|失業保険の手続き後に病気になった場合
名前が似ていますが、健康保険の「傷病手当金」と、
雇用保険の「傷病手当」は別の制度です。
雇用保険の受給手続きをした後に、
病気やけがで15日以上働けなくなった場合、
一定の条件のもとで基本手当に代わる傷病手当を受けられることがあります。
支給額は基本手当と同額です。
ただし、健康保険の傷病手当金などを受けている場合や、
待期・給付制限中などは対象外となることがあります。
30日以上働けない見込みなら、受給期間延長との比較も必要です。
退職前から病気で働けない人が、
無条件で受け取れる制度ではないことに注意しましょう。
救済制度④ 障害年金|長期療養が必要な人の生活を支える
病気やけがによって、
日常生活や仕事に大きな制限が生じている場合、
障害年金を受け取れる可能性があります。
障害年金は、身体の障害だけでなく、
一定の精神疾患や内部疾患なども対象になり得ます。
障害年金の種類
障害基礎年金
国民年金の加入期間などに初診日があり、
原則として障害等級1級または2級に該当する場合に対象となります。
障害厚生年金
厚生年金の加入期間中に初診日があり、
原則として障害等級1級から3級に該当する場合に対象となります。
どちらも初診日、保険料の納付状況、
障害の程度などの条件があります。
退職していても申請できる?
退職後でも、初診日などの条件を満たしていれば申請できる場合があります。
例えば、会社員として厚生年金に加入していた時期に初めて受診した病気が、
その後悪化した場合などです。
障害年金は、単に病名が付いているだけで受けられるものではありません。
年金事務所などに相談し、初診日や必要書類を確認しましょう。
救済制度⑤ 高額療養費制度|治療費の負担を抑える
長期療養では、生活費だけでなく医療費も大きな負担になります。
そこで確認したいのが高額療養費制度です。
この制度は、健康保険が適用される医療費について、
一定期間の自己負担額が所得や年齢などに応じた上限を超えた場合、
その超過分が支給される仕組みです。
対象となる費用
基本的には、保険診療の自己負担額が対象です。
一方で、差額ベッド代や食事代、
保険適用外の治療費などは原則として対象外です。
申請するときのポイント
マイナ保険証による限度額情報の利用や、
限度額適用認定証などによって、
窓口での支払いを自己負担限度額までに抑えられる場合があります。
高額療養費制度は2026年8月から見直しが行われています。
具体的な自己負担限度額は、
加入先の健康保険や厚生労働省の最新案内で確認しましょう。
救済制度⑥ 生活困窮者自立支援制度|家賃や生活の相談ができる
病気で収入が減り、生活が苦しくなった人には、
生活困窮者自立支援制度があります。
この制度では、自治体の相談窓口で生活全体の状況を確認し、
必要な支援につなげてもらえます。
例えば、次のような支援があります。
- 家計改善の相談
- 就労に向けた準備支援
- 住まいに関する相談
- 住居確保給付金の案内
- 他の福祉制度への橋渡し
家賃が払えない場合は?
住居確保給付金を利用できる場合があります。
ただし、収入・資産などの要件があり、
家賃補助については求職活動などの条件もあります。
病気でまったく働けない場合には、
条件を満たさないこともあるため、
別の福祉制度を含めて相談しましょう。
救済制度⑦ 生活保護|生活を維持できないときの最後の安全網
「働けない。貯金も少ない。家賃や食費を払えない」
このような状況では、生活保護も重要な選択肢です。
生活保護は、収入や利用できる資産、他の制度などを活用しても、
最低限度の生活を維持することが難しい人を支える制度です。
病気で働けなくても申請できる?
はい。病気で働けないこと自体は、
申請を妨げる理由ではありません。
生活保護には、生活費を支える生活扶助、
家賃に関する住宅扶助、必要な医療を支える医療扶助などがあります。
ただし、世帯の収入・資産などを確認したうえで、
保護の必要性が判断されます。
家族に相談しないと申請できない?
親族への相談を済ませていなくても、申請は可能です。
必要書類がそろっていなくても申請できます。
生活費が尽きそうな場合は、我慢せず、
住んでいる地域の福祉事務所へ早めに相談しましょう。
救済制度⑧ 求職者支援制度|失業保険を受けられない人の再就職を支援
「雇用保険の加入期間が足りない」
「失業保険の受給が終了してしまった」
「以前は自営業だったので、雇用保険に加入していなかった」
こうした人が再就職を目指す場合、
求職者支援制度を利用できる可能性があります。
一定の条件を満たす人は、無料の職業訓練を受けながら、
月10万円の職業訓練受講給付金などを受けられます。
注意点
この制度には、働く意思と能力があり、
訓練を受けられる状態であることなどの要件があります。
そのため、治療中でまったく働けない人が、
すぐに利用できるとは限りません。
回復後の再就職に備える制度として考えましょう。
救済制度⑨ 国民年金保険料の免除・猶予|退職後の固定費を減らす
退職すると、これまで給与から天引きされていた年金保険料を、
自分で納める必要が生じる場合があります。
しかし、病気や失業によって収入が減った場合、
国民年金保険料の免除や納付猶予を申請できることがあります。
免除制度
所得などの条件に応じて、全額免除または一部免除が認められる制度です。
失業した人には、前年所得の取り扱いに特例が設けられています。
納付猶予制度
原則として20歳以上50歳未満の人が対象で、
本人や配偶者の所得などに応じて納付が猶予されます。
注意したいのは、保険料を払えないからといって放置しないことです。
未納のままにすると、将来の老齢年金だけでなく、
障害年金や遺族年金の受給にも影響する可能性があります。
退職後の国民健康保険料についても、
所得減少や離職理由に応じた軽減・減免制度が利用できる場合があるため、
市区町村の窓口で確認しましょう。
状況別|どの制度を確認すればよい?
ケースA:会社員で、病気の治療中に退職を考えている
まず確認したいのは、加入している健康保険の傷病手当金です。
退職前に条件を確認することで、退職後の生活保障につながる場合があります。
あわせて、会社の休職制度や有給休暇、病気休暇の有無も確認しましょう。
退職しなくても治療を続けられる方法がないか、先に検討することが大切です。
ケースB:すでに退職したが、病気ですぐに働けない
雇用保険の受給資格がある場合は、
受給期間延長の対象になるか確認しましょう。
同時に、傷病手当金の継続給付の条件を満たしていないかも確認します。
生活費が足りない場合は、
生活困窮者自立支援制度や生活保護の相談窓口につながることも重要です。
ケースC:長期治療が必要で、仕事に復帰できる見込みが立たない
障害年金の対象となる可能性がないか、年金事務所へ相談しましょう。
医療費については高額療養費制度を確認します。
収入や資産の状況によっては、生活保護の相談も検討してください。
ケースD:雇用保険に入っておらず、失業保険を受けられない
働ける状態なら、求職者支援制度を検討しましょう。
病気で働けない状態なら、生活困窮者自立支援制度や生活保護など、
福祉の相談窓口が重要になります。
退職前に確認しておきたい7つのこと
病気やけがを理由に退職する前に、次の項目を整理しておきましょう。
- 会社の休職制度や病気休暇を利用できないか
- 傷病手当金の対象になるか
- 退職後も傷病手当金を受けられる条件を満たすか
- 雇用保険の受給資格と受給期間延長を確認したか
- 健康保険の切り替えと医療費の負担を確認したか
- 年金保険料や健康保険料の免除・減免を確認したか
- 当面の生活費と相談先を整理したか
治療中で判断が難しい場合は、家族や主治医、
医療ソーシャルワーカーなどの力を借りることもできます。
よくある質問
Q.うつ病で退職した場合も支援制度を利用できますか?
利用できる可能性があります。
傷病手当金、雇用保険の受給期間延長、障害年金などは、
病名だけではなく、加入状況や働けない状態、障害の程度などに応じて判断されます。
まずは主治医と相談し、必要な書類を確認しましょう。
Q.傷病手当金と失業保険は同時にもらえますか?
健康保険の傷病手当金は働けない状態を前提とし、
失業保険の基本手当は働ける状態を前提とするため、
通常は同じ期間について両方を受け取ることはできません。
回復後に失業保険を受けられるよう、受給期間延長を利用する場合があります。
Q.貯金が少し残っていても生活保護を申請できますか?
申請はできます。
ただし、受給できるかどうかは、世帯の収入や資産、
生活状況などを踏まえて判断されます。
「少し貯金があるから相談できない」と自己判断せず、
福祉事務所へ確認しましょう。
Q.退職代行を利用した場合、支援制度は受けられなくなりますか?
退職代行を利用したという事実だけで、
すべての支援制度の対象外になるわけではありません。
ただし、離職理由や雇用保険の加入状況、
退職日の就労状況、健康保険の資格などは制度の判定に関わります。
退職前に、必要書類や傷病手当金の条件を確認しておきましょう。
まとめ|病気で働けないときは、生活を守る制度を先に確認しよう
病気やけがで働けなくなると、治療の不安に加えて、
収入がなくなる不安も大きくなります。
しかし、失業保険が受けられないからといって、
利用できる制度が何もないわけではありません。
傷病手当金、障害年金、高額療養費制度、生活困窮者自立支援制度、
生活保護など、状況に応じた支援があります。
また、今すぐ働けない人は、
失業保険の受給期間延長を検討することで、
回復後の再就職に備えられる場合があります。
退職することが最善なのか、
休職して治療を続ける方法があるのか。
まずはそこから考えてみてください。
退職は人生の終わりではありません。
そして、病気の治療中に無理をして再就職を急ぐ必要もありません。
必要な制度を確認し、生活の見通しを立てながら、
回復とその後の働き方を考えていきましょう。
「退職代行ラボ」は、退職を勧めるだけのサイトではありません。
働き続けることも、休職することも、退職して療養することも、
一人ひとりが自分の状況に合わせて選べるよう、情報を届けていきます。


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